好き、嫌いは否めない

日記に嘘を混ぜ込んで、ショートショートを書いています。

彼岸花咲く頃(ショートショート)

年越しは何年も実家には戻らなかった。

不便に感じていたのか、母は何も用事がないなら帰ってきなさい、と言ってくれた。

戻らなかったのは、父と上手くいかなかったからだ。度々衝突し、私は父を拒絶した。

久しぶりに帰った実家は玄関でさえよそよそしく、少し躊躇し、そろっと玄関を開けるとそこに母がいて、いつもの様に何が食べたいか聞き、好物のトンカツを作ってくれた。

久しぶりに家族全員揃った食卓で母は、私の仕事の事や、色々を聞き、私も色々を答えた。その何が気に入らなかったのか、父の一言(何かは忘れた)、沸点が分からない癇癪を浴び、自制の糸がプチンときれ、そのまま家を飛び出し、法定速度をはるかに超えたスピードでミニクーパーを走らせた。ちょっとした段差で車体下をこすってエンジンが止まり、外に出て「嗚呼、もうっ」と叫び、前輪を蹴り上げた。足が痛くて少し泣いた。