好き、嫌いは否めない

日記に嘘を混ぜ込んで、ショートショートを書いています。

ノンフィクション(ショートショート)

テレビ台に収納してあった佐野元春ブルーレイディスクを探していると、不意に幼い頃の息子の映像を見つけた。

再生してみると季節はちょうど今頃、紅葉の安達太良山をロープウェイで登っている。

息子は、霧で幻想的な風景を何とか言葉にして伝えようとしている。

その横で優しく話しかけるのは、若かりし日の私だった。

 

映像は切り替わり、実家で息子が上半身裸になって柴犬と遊んでいる。

父は柴犬を捕まえ、ホースで水をかけ体を洗うと柴犬は嫌がり、それを見てケラケラと笑っている息子にも水をかけ、走り回って喜んでいる。柴犬はブルブルと体を揺すり犬小屋へと逃げ、息子は、何度も何度も、イヤイヤ言いながら水を掛けられに父の側まで行って、案の定水を掛けられ、はしゃいでいた。

 

父のこんな優しい顔を初めて見た気がする。私の息子を見る目と、何も変わらない。