冷蔵庫を開いて、しばし考え、冷蔵庫を閉じる。あ、卵だ。冷蔵庫を開いて卵を取る。
何に使う卵だ、と考えていると、鍋を火にかけているのを忘れ、吹きこぼしてしまった。最近は人の名前が出てこないし、あんなに歌っていた曲のサビを忘れてしまう。
ここは何処だ。家族がいない。そもそも私に家族などいたのか？憶えていない。
しかし、此処の人達は親切だ。友達も出来た。童謡を皆で歌ったり、将棋を指したりと楽しく暮らしている。将棋の最終局面（かなり劣勢だったが）で、私にお客様が見えた。
「元気そうだね。ほう将棋か。」
「一局どうかね。」男に尋ねるも、忙しい、又今度と言って部屋を出ていった。
「すみません、父の名前って何でしたっけ。最近人の名前が出てこないんですよ。」
