亡くなった父の机の中から、私が使っていたジッポーライターを見つけた。
大した価値もない普通のジッポーだが、チタニウム製に惹かれ購入した思い入れのある物だった。
親指で蓋を弾いて、弾いた指でリールを回してみた。火は付かなかった。
帰路、途中のコンビニに寄った。
夕飯を作るには余りにも疲れていて妻と息子と私と三人分のお弁当を買った。
ついでにジッポーオイルと着火に使う石も買った。
帰宅してすぐ、ジッポを磨きあげ、着火石を入れ、オイルを充填した。蓋を引いてリールを回す。
炎はめらめらと青く揺れていた。
換気扇の下で、ジッポーの炎で煙草に火をつけ、肺の奥まで吸って、ゆっくりと鼻から出した。煙は換気扇に吸い上げられていく。
ラジオではシンディ・ローパーのタイムアフラータイムが流れていた。
突然記憶が蘇る ぬくもりの夜
ほとんど置き去ってきた
スーツケースに詰めた思い出たち
何度も…