男の一人暮らしなんてそんなもんだ。
オーディオを買うお金は捻出するのに、洗濯機にまわすお金はない。
洗濯物は一週間溜め込んで火曜日の午前中にコインランドリーだった。
アパートから徒歩十分の所にサンシャインという名のコインランドリーはあった。
名前をつけ間違えたとしか思えない、ボロボロのランドリー。
音楽も流れていない、聞こえるのは洗濯機が回る駆動音だけの異空間。
ドラム式洗濯機に洗濯物を投げ入れ、乾燥までの約一時間、僕は窓の外を眺めているのが好きだった。
窓の外には道路を挟んで法務局が見える。
法務局を訪れる人は皆、書類を小脇に抱え、何か切羽詰まった表情の人が多いように思えた。
それを暇つぶしに見ていた。
自分には関係のない、責任とやらを抱え込んでいる様だった。
小脇に抱える書類など何もない若かりし僕は、三十年後の自分を見ているとは、その時思いもしなかった。