テクノロジーの進化は歓迎すべき物ではあるが、電気自動車に乗っても、へぇと感心はすれど、欲しいとは全く思わなかった。
旧車には今の車に無い、浪漫があった。
昔、ミニが生産を止めると聞いて、私は二百万の車を衝動買いした。
サーフブルーの新車のエンジンキーを回すと、ブルンと動物の様に吠え、トコトコとアイドリングしている様は鼓動すら感じ、自然と笑みが溢れてしまう車だった。
チープな作りながらも誇らしげな小さい水色の車は、私の忘れられない二十代の沢山の思い出達を運んでくれた。
そして今、水色のルノートゥインゴに乗っている。
この車にも浪漫があった様だ。
五十代の思い出達はこの車に乗せて行く。
「なるほど。テクノロジーの進化は顧客ニーズの分析にも使われているんですね。」
「そう、浪漫は粗利が稼げるからね。」
課長は自動運転車の助手席で高笑いした。